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気が向いたら思いついたことを書いてみます
40年以上前、岩波書店『図書』で淮陰生なる人が「小股の切れ上がった」という言葉の意味についてあれこれ書いていたのを記憶している。今調べると、淮陰生は中野好夫。『図書』の記事は『一月一話』に収録されているとのことなので早速注文した。50円也。送料を入れても307円。
平山蘆江『東京おぼえ帳』に「小股がきれあがった」について、次のような記述があった。

雅語につれて、かつちけねえといふ元禄言葉がどうやら復活しかかったり。憂鬱などむつかしい云ひ方が無造作に若い芸者の間につかはれるのも昭和以後のはやりではあるが、そのくせ小股がきれあがつたといふ生粋の東京語は少しもすたらないくせに、その意味と言葉の出どころを知つた人が、殆んど見あたらない。
ついに《ママ》先頃もお歴々の文壇人たちが、この言葉について語意語源を論じてゐたらしかつたがてんで成つてゐなかつた。
小股といふのを肉体の太股として考へるから判らないのだ、歩度と解説すればすぐに納得が行く筈、あの言葉は吉原から出た言葉で売出しの花魁が道中をするのに、まづ内八文字を踏みます、幾月か踏む中に売れ高が増してお職を張るほどになつたとする、即ちダンサーでいへばナンバーワンの席につくわけで、そこまでゆくと道中も外八文字となる、花魁も外八文字が踏めるほどになれば立居振舞がいとどもの慣れて、少しはかけ出しても、大またのあるき方をしても取乱した姿にはならない、これ即ち小またが切れ上つたといふ形容のあてはまる女つぷりになれたことで、小きざみのいそぎあしが、軽々として而も風情のあることと思へばまちがひはない。
かう説明しても、そもそも、外八文字、内八文字といふあるき方を、東京では見るよしもなく、芝居にのみ残つた六方といふ男のあるき方でさへ、本六方を踏める役者が、数へるほどもなくなつた今となつては、今更小またのきれ上つた女と、言葉にのこるのが蓋し奇蹟ともいへよう、洋装をして大またに一メートルづつも足を踏んばる女たちは、それこそ大またのまくれ上つたといふくらゐに形容しなければ納得のいかぬ時代だ。

『日本国語大辞典』は、「こまたがきれあがった」について
主として女性の、すらりとして粋なさま。きりりとして小粋な婦人の容姿の形容
とのみ述べ、用例を5つ挙げた後、「語誌」として3説を紹介している。
(1)西鶴の「本朝二十不孝」に、背丈の高い形容として「徒俣(すまた)切れあがりて」という表現があり、これとの関連などから、背丈のすらりとしている形容とする説が有力である。安永頃の流行語であったらしい。普通、女性についていうが、挙例の「五重塔」にも見えるように男性にいうこともあった。
(2)「小股」については「小」を接頭語とするほかに、「下腹部の左右を上に走る二つの鼠蹊線」とするなど、身体のさまざまな部位になぞらえる説もある。
(3)永井荷風は「麻布襍記‐隠居のこごと」で次のようにいっている。「小股のきり上った女また小褄のきりりとした女なぞいふ言葉もあり。これ顔の男好きするといふ事を姿のよしあしに移して言へるものなり。着物の着こなし上手にして立居の様子甚軽快なれども決して色気を失はず、しなやかにして而も厭味なきもの即小褄のきりりとしたものと言ふべし。でぶでぶ肥りたるもの、痩細りたるもの、素足の醜きもの、腰太くして尻の大きなるもの皆共に小股の切り上ったとは言はれず。〈略〉されば上流の婦人また良家の令嬢なぞに対してはこの言葉は用ひ難かるべし。町の女芸妓なぞいづれも既に男の肌よく知りたると見ゆる女のさして取りつくろはぬ姿につきて言ふものと知るべし」 
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